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『前十字靭帯損傷からの再適応 Part2』 女性の前十字靭帯損傷について <欧州フィジカル/スポーツメディカルレポート by チャビ・リンデ>

皆さんこんにちは。


前回から時間が空いてしまいましたが、今回も『前十字靭帯損傷からの再適応』をテーマとして、その中でも特に年齢や性差による傾向などについても触れていきたいと思います。


Part.1についてもよろしければ こちら から振り返ってみてからご一読ください。




◼︎前十字靭帯損傷の一般的な発生傾向


2000年に靭帯のリサーチのエキスパートであるRobert Gotlin氏とGordon Huie氏によって発表された論文によると、『ACL断裂は膝靭帯損傷の50%を占めており、男性よりも女性の方が罹患、75%はスポーツ活動中に発生する』というデータが確認されています。


他の著名な研究者たちも同じく、靭帯損傷に関して女性は男性に比べて高いリスクを抱えていることをいくつかの論文で言及しています。





女性の方が損傷しやすい傾向にある原因は以下の通りです。



  • 膝の大きな外反動作

  • ハムストリングスと大腿四頭筋の筋力のバランスの悪さ

  • 膝の過伸展による踏み出しと着地

  • 股関節とコアの弱さ

  • 臀筋と比較した際に大腿四頭筋ばかりが使われる



これらの理由から、女性アスリートが競技復帰のために再適応(スポーツ的感知を目指すためのトレーニング)を行う際のキーポイントとなる要素は、股関節の伸展筋と外旋筋、外転筋、安定化筋です。

そして女性ならではの月経周期に伴うホルモンの変化は傷害リスク要因として重要視されています。





例として、様々なスポーツでの男性と女性のACLの傷害発生率を比較した研究から抽出した数値データを以下に記載しました。


スポーツのタイプ

女性

男性

接触の無いスポーツ

0.36

0.21

軽い接触の発生するスポーツ

0.71

0.29

接触の発生するスポーツ

1.88

0.87

衝突の発生するスポーツ

2.10

1.12

接地している状態または着地の際に、回旋と強い衝撃が発生するスポーツ

4.80

1.75

*この数値データは各行で参照されているスポーツを行う10,000人毎での数値です。例えば、接触のないスポーツでは女性10,000人のうち0.36人がACLの怪我を負うことが分かります。




あらゆるタイプのスポーツにおいて、女性は男性よりも傷害発生率が高いこと、さらには、接触があるスポーツほど男女間の差が大きくなることも分かります。



但し、今までの男女間の差とは違い、再受傷(競技復帰をして再び同じ怪我を負うこと)に関しては女性の方が優位であることもご紹介しておきましょう。



性別関係無く、前十字靭帯損傷から復帰した際の再受傷のリスクは約9〜29%とされているのですが、手術後の前十字靭帯の再手術≒再受傷は、18歳未満の女性が12.9%であったのに対して、18未満の男性では28.3%という倍以上の最も高い数字になっています。


一般的には女性は男性よりも傷害発生率が高いとされていることを考えると、女性よりも男性の方が特に18歳未満で再受傷の傾向が高いこのデータは非常に興味深いものだと言えます。


18歳以上の男性の再受傷率は13.8%であることと比べると、18歳未満の男性の28.3%この数字は性別での比較を抜きにしても顕著であり注目すべきものだと言えるでしょう。




最後に、適切な再適応プロセスの重要性を強調しておきます。

一般レベルから様々な研究まで観察すると、ジャンプやアジリティの動作にしっかりと取り組むプログラムを少なくとも6ヶ月のリハビリテーション中で実施した人は、最適に競技復帰出来る割合が高かったことが示されています。

これら全てを考慮すると、今日では安全かつ完全に回復するのに10ヶ月、場合によっては12ヶ月の期間を与えることが推奨されています。


さらには競技復帰するための心理的な準備が十分に整ってない若い選手は2度目のACL断裂を患う可能性がはるかに高くなるため、心理的なトレーニングも欠かせない要素になります。


「リカバリープロセス中の心理的な変化」があるので、Part1、Part2で提案された全ての要素を含む『良いスポーツ再適応』を行うことにより、競技復帰に向けた能力の改善が期待出来るようになり自信を与えることが可能となるので、どの要素も見逃さずに取り組みましょう。



それではまた次回。アスタ・ルエゴ!(またね)




翻訳:古川勇太

監修:田中五大


≪Invisible training≫

Invisible training CEO、FCバルセロナ理学療法&RTP部門責任者チャビ・リンデ監修の下、トレーニングやコンディショニングについての解説動画、150以上のエクササイズ、スポーツトレーナーやアスリートによるトレーニング配信やセルフパフォーマンスチェックのプログラムなどパフォーマンスを最大化させるためのサービスが凝縮された、次世代オンライントレーニングサービス。


 

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